今年はバカロボのヨーロッパ大会がブタペストで開催されますし、ここらで本場の「ロボコン」を見てみたい、ということで、北京で開催された「ABUロボコン 中国大会」へ行ってきました。ロボコンといっても、世界中でいろんな競技がありますが、ABUはその中でも最大級の国際大会。日本代表を決める国内大会はすでに終了し、今年の本戦はエジプトで開催されるそうです。
中国はそのABUロボコンで、毎年優勝を決めています。「なんでそんなに強いの?」。その理由を見つけるのも、今回の視察の目的でもあります。
今年にの中国大会は、北京郊外にある巨大なテレビスタジオ地区。ばかでかいスタジオが並び、ホテルまである場所でした。
巨大なスタジオの中に入ると、そこはロボコンのスタジアム。まず目に飛び込んでくるのは各大学の応援の旗やのぼり。赤を基調にしているせいか、まさに中国!という独特の空気になってました。応援団も、野太い声でエールを送っており、なかなか骨太な理系男子たちでした。
今年の世界大会がエジプトで行われることもあり、今年のロボコンの競技は「ブロックを運んで、三つのピラミッドを作る」というものでした
ただし、一つ目のピラミッドを作るロボットは、人間が操縦していいのですが、二つ目、三つ目のピラミッドはなんと「全自動」で動かなければなりません。そして頂上の黄色のブロックを先に置いたものが勝ち。つまり「立体陣取りゲーム」のようなものです。
各チーム、工夫を凝らしたマシンが、自動でブロックを積んで戦う姿は、圧巻でした。
テレビ局主催で、オンエアされることもあって、かなり演出がされていました。バトルの合間に、なぜかお色気たっぷりのチアリーダーたちのダンスとかがあり、徹夜で作業を続けてきた繊細な理系男子たちには、鼻血が出るんとちがうか?という一面もあり、ドキドキしました。
スタジオのとなりは、ピットになっていて、本番前のロボットの調整を、各大学のみなさん、必死になってやってました。ブロックを運ぶ、という大胆な運動と、正しい場所に置く、という繊細な運動の両方を行わなければならないので、とにかくロボットのメンテナンスが、ハード面もソフト面も大変そうでした。その苦労の跡が、手垢まみれになったロボットの表面から伝わってきました。
徹夜が続いているのでしょう、あちこちでぶっ倒れて寝ている学生さんたちが、印象的でした。
ネタばれをするので書けませんが、優勝したチームは、意外な方法ブロックを運ぶチームでした。
おそらく、ブロックを運び、定まった位置に置くという「目的」に対し、厳密に考えていけば、その方法は、正しい答えになるのでしょうが、その手前で「ロボコンのロボットはこうあるべき」という常識やイメージにとらわれてしまって、各大学ともスピードの出ないロボットを作っていまっていたのかもしれません。
常識やイメージは強烈なものなので、とらわれてしまうと、それが正しいと思ってしまう。けれどそれは「手段」であって「目的」ではない。中国のロボコンの強さは、研究費が多いからとか、人材の層が厚いからとか、いろいろ理由はあると思いますが、まずはロボットが達成すべき「目的」のために、常識的な「手段」をすべてチャラにして、フラットな発想から出発できていることかも、と思いました。
それがなぜできるかというと、学問の自由さだと思います。学ぶことは「頭でっかち」になると思われがちですが、そうではなく、いろいろなパターンを知ることで、発想力は広がります。なんだかそんな勉学ができてるんだろうなー、と、上位に入賞した中国の理系男子たちの気持ち良い笑顔を見て、思いました。