TBSドラマ「重版出来!」に出演しました。ライバル漫画雑誌エンペラーの副編集長の役です。
これまで、映画には「ちょい役」でなんどか出演したことがありました。「腑抜けども、悲しみの愛をみせろ」をのぞくと、どれも10秒ほどの出演で、あきらかにエンドロールの「明和電機」で、笑いをとるため、というポジションでした。自分でも「10秒俳優」と呼んでました。
今回ドラマの話をいただいたとき、まじですか?ドラマなんてやったことないですよ?と思いましたが「また笑いをとるためのチョイ役だろう」と思い、「いいですよ~」とかるーく引き受けました。
一話分の台本をいただき、衣装合わせをしたところ、演じる「見坊我無(けんぼうがむ)」という役がかなり胡散臭いキャラであることが判明。前々から悪役をやってみたいなー、インテリやくざとかいいなー、と思ってたので、「おいしいチョイ役やな。今回は15秒ぐらいか?」とほくそえみました。
ドラマのスタッフのみなさんも、縦縞ストライプスーツの胡散臭い僕を見て「よいですね~」と笑ってました。よし、ドラマでも、一発笑わせて退散や!と思いましたが、帰り際にスタッフの方が「ドラマの後半、オダギリジョーさんのライバルとしてどんどん重要な役になりますからねー」と真剣な顔でボソリ。
・・・・え? チョイ役じゃないの?
まじかああああああ!!!
まてまてまて、ドラマやったことないし、電気屋だし、トンカツ弁当の福神漬けのつもりが、トンカツやん!
とにかく、まわりのみなさんの足手まといにならぬよう、セリフを覚え、「こ、こんな感じかな?」と真夜中の明和電機の工場で、鏡を見ながら役を考え、一応、自分なりのイメージは固めてみました。
しかし、そんな付け焼き刃が、現場で通用するわけがありません。
ここで、ドラマの撮影の進行をご説明すると、まず、役者さんは本番までに、完璧にそのシーンの動きや表情を作ってきます。練習はなし。で、いきなり「ドライ」とよばれる、撮影無しのシーンを演技。それを見て、演出監督、カメラマンさんが、もっとも効果的な構図や流れを検討します。
そして次にカメラリハーサルで、問題がないかチェック。この流れの中で、演出監督さんが、役者さんに演技のアドバイスをします。
そのあと、いよいよ本番の撮影。早いときは、ここまでの流れのが、1シーン30分ぐらいで進みます。映画の現場しかみたことがない僕には、なんというスピード感!やはり毎週放送されるドラマは、この現場でスピーディーに判断し、結果を作っていくのが大切なんだと、感心いたしました。
で、オダギリジョーさんといきなり対面するシーンの撮影があったわけです。
現場に入って、メイクをして、いきなり「ドライ」でオダギリジョーさんの前にたたされるわけですよ。これは恐怖です。
例えるならば、映画「グラディエーター」で、古代ローマの闘技場にほうりこまれたやせっぽちの平民が、重い扉が開かれ、だだっ広い戦いの場に転びながらつき出され、ふと顔をあげたら目の前にどでかいライオンがいた・・・ぐらいのびびり具合です。(注:グラディエーターにはそんなシーンありません)
もうね、頭は真っ白です。だって30cm前にオダギリジョーさんのどえらいカッコいい顔があるんですよ。「ボトラッテ!」言われたら失禁ですよ。
しかし、容赦なく監督さんが「ドライいきます。よーーい。スタあああト!」。次の瞬間、僕の口からは
「あうあうあうあうあうあうあ」
という音しか出てませんでした。アシカみたいに。
スタッフのみなさんも、オダギリジョーさんも、顔面に「ま じ で す か」という表情が現れ、それがさらに僕の緊張感をあおり、ますます「あうあうあう」とアシカ化していきました。
そんな僕の退化を止めるべく、監督さんが「・・・先日はどうも」と、僕のセリフをぼそり。それを聞いてまわりのスタッフもはっとして「・・・先日はどうも」。さらにそれに合わせて僕が「先日はどうも」。次に監督さんが「お買い求め、ありがとうございます」。それに合わせてスタッフさん。そして僕。こんな調子で、現場のみなさんのシュプレヒコールにあわせて、すべてのセリフを言ったのでした。
オダギリジョーさんもウィンブルドンで素人とペア組まされたテニスプレーヤーみたいな不安の表情をされてるし・・・・・みじめで泣きたくなりました。
「あかん!これは迷惑かけとる!」と思い、なんとかカメラリハ前の20分ほどの休憩で、自分の動きとセリフを整理、カメラリハの合間になんとか建て直しました。
普段、明和電機のステージで、世界各地でライブをやって来ましたが、緊張感をしたことなどほとんどありません。それは、その舞台にある機械も演出もすべて自分が作ったものだし、もしトラブルがあってン「アドリブ」で演出に変えることができるからです。
しかしドラマの現場では、「トラブル」も「アドリブ」もNGです。このことが僕にとって経験したことのない緊張感にさせます。
しかしその一方で、演技で動きを決めていく感覚が、ちょうどロボットにシーケンサーでプログラムしていくことや、音楽の打ち込みにも似ていて面白かったです。
とにかく現場の皆様に助けていただいてのドラマ出演でした。なんといっても贅沢だったのが、黒木華さん、オダギリジョーさん、滝藤賢一さん、最上もがさんらの生の演技が目の前にあり「本物のドラマがかぶりつきで見れてる!3Dより飛び出してる!」ということでした。
滝藤賢一さんとは、撮影の合間にゆかいな話もしていただき、撮影が現場でこころの柔軟体操もできて、たいへん助かりました。ありがとうございます!
重版出来!は、自分が出演したことを抜きにしても、クリエーターとして、マネージメントとはなにか、作品制作とはなにかを考えさせられるドラマで引きこまれます。毎回、テレビの前で正座して見てます。
いよいよ来週は最終回。みなさまも、ぜひごらんください!
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さて、6月10日から大阪グランフロントにて「明和電機ナンセンスマシーン展」が開催されます。(本業はこちら)。ことしの2月、上海の美術館McaMで開催された、明和電機としての過去最大級の展覧会の凱旋展になります。皆様、どうぞご来場ください!
■展覧会名 : 「明和電機 ナンセンスマシーン展 in 大阪」
■会期:2016年6月10日(金)~6月26日(日)
11:00~19:00
※金曜日、土曜日は20:30まで開館。
※入館は閉館の30分前まで。
■会場:グランフロント大阪 ナレッジキャピタル EVENT Lab.
〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町3-1グランフロント大阪北館 B1F
■チケット
前売り・・・一般・大学生1000円、中高生600円、小学生・・・300円