まさかの大失敗である。いや、スーパー大失敗である。
UMEツアー初日の東京公演。電動楽器を動かす制御系が故障し、まったく動かなくなってしまった。そのため、演目の全編を、社長のアカペラの歌と、楽器が動いているフリのパントマイムで乗り切る、という事態になった。今回のツアーの予測で、「全編まった楽器が動かない」という、明和電機ライブでもこれまでに一度もなかった最悪のパターンも想定していたが、まさかのっけからそれが起きてしまった。
初めて明和電機を見たお客さまは、「なんだこれは。何を見せられてるんだ」とご立腹されたことと思います。また、この日のライブのために準備をされてきたお客様にも満足がいくライブをご覧いただけない結果になってしまいました。本当に申し訳ありませんでした。
明和電機の楽器は、これまで本番で何度も故障してきました。機械は動くことにより壊れていく存在なので、本質的に僕は機械の楽器を信用しておらず、また、一人ツアーなので、UMEツアーにむけて1年がかりで壊れにくい楽器の開発と、もしもの故障でもすぐに対応できるよう、同じ楽器と制御系をバックアップとしてステージの横に待機させてました。こうした体制のおかげで、本番前までの数々のリハーサルでは故障はありませんでした。よし、いける!と自信を持っていたのです。この過信が今回の結果となってしました。
イベントの第一部の事業報告ショーでは、経理のヲノさん、会長も登場し、感動イ・パクサさんとのコラボで「YMCA」を演奏、そして最後の明和電機社歌。ここでもUMEコースの楽器たちはまったく問題なく動いていました。
そして休憩を挟んで第二部は、前半松コース、後半に梅コースという内容。緞帳があき、会長とのコイビートとパチモクの演奏があり、さあ、いくぞと一曲目「イカリを揚げよう」の演奏データのスイッチを押したところ・・・え?まったく反応しない。
楽器は壊れていないので、真っ先に疑ったのが、楽器とPCの間にあるMIDIインターフェース。実は本番直前のリハでMIDIインターフェースが不具合が起きて対応したので、こいつか!と思い、すぐにバックアップのMIDIインターフェースに交換する必要があるが、それにはPCのデータを変える必要がある。
これは時間がかかる。ここはお兄ちゃんにお願いするしかない。「すんません!トークよろしくお願いします!」と、youtubeの生配信みたいな感じでつないでもらい、その間にデータの修正作業。チラリと舞台袖を見ると、イスに座っているパクサさんのクールな細い目がさらに細くなり、「大丈夫なのか?」という感じでこちらをみている。うわあああ。申しわけありません。
インターフェースを交換し、スイッチをオン!と入れたところ、イカリ揚げようのデータが無事に走った。よかった!と安心しました。
ここから前半の松コースの演目に。
27年振りのイ・パクサさんとの「俺は宇宙のファンタジー」で胸が熱くなり、会長の「君はエプロン僕はパンタロン」で涙し、「地球のプレゼント」で会場が一体となり、緞帳降りて大演壇で前半の松コースが終了して後半の梅コースへ。
しかしここまでですでに40分のロスタイム。後半の梅コースの演目を大幅に削らないといけない。緞帳の前で会長とつなぎのトークの間に梅コースのステージに転換。
「さあいよいよツアー初日の演奏だ。」
緞帳が開き、ひとりパチモクを背負って真っ暗のステージの中央へ。PCのスタートボタン押せば、仕込んでおいたライトが僕の姿を照らす・・・と思いきや、あれ?まただ。まったく反応しない。停電が起きた会場みたいになっている。
「まじか・・」と真っ暗闇の中、頭の中が真っ白になった。とにかくこの状況はまずい。会長の小粋なトークもない。そこでステージ後方の照明スタッフさんに「あ、明かりをお願いします」とマイクで伝えた。すると、なんと会場にいたお客さまが「明和電球(ペンライトの電球型)」をつぎつぎにつけていただき、会場がぱあーと明るくなった。なんてみなさん優しいんだろう!本当にありがとうございます!と心の中で号泣でした。
再びPCを確認し、ソフトを再起動してもやっぱりMIDIインターフェースを読み込まない。MIDIインターフェース自体はランプがついているので故障していない。
「(あ、そうか、USBハブの故障か・・おそらくまちがいない)」
と、ここでやっとすべての原因に気づきました。盲点でした。楽器やインターフェースやソフトウェアはこれまで故障が起きていたので万全のバックアップなどの体制でのぞんでいたが、まさかのUSBハブとは。これまで故障したことがないから、認識に入っていなかった。
ハブを交換をしていたら、もう本編の時間がなくなってしまう。それに交換をしても動く保証はない。目の前のたくさんのみなさんのまなざしがある。貴重な時間なのに故障修理を延々と見せるわけにはいかない。みなさんが見にきているのはライブだ。
「動く楽器はあきらめよう。完成した絵画ではなく、デッサンみたいに、今回のUMEコースの内容を伝えよう」
と心にきめました。
そのあとは、動かない楽器たちを使って、アカペラとパントマイムで、UMEツアーをやるという事態になってしまいました。ご来場いただいた皆様、本当に申し訳ありませんでした。
救いは、イ・パクサさんとのコラボでは奇跡的に楽器が動いていたことです。楽しいステージをできて本当に良かったです。
明日は静岡公演。夕方には東京を出発するので、それまでに制御系のバックアップ体制もつくって、ラパンに積んで行きます。
<浜松へ続く>