愛三電機さんとLANでつながりました

11月16日、ツイッターをながめていた僕は、不思議な画像に目が止まりました。それがこちら。

LANケーブルである。だけど短い!しかもキーホルダーになっている。「なんだこれは!かわいい!」と目が釘付けになりました。

LANケーブルは普通は長い。屋内を取り回すのだから当然だ。明和電機のアトリエにも、使わないのに10m、20mクラスのLANケーブルの束がたくさんある。

LANケーブルはその両端にインとアウトの口があり、その間に長い長い電線がある。インとアウトを見ようとしたらグルグル巻にするしかないが、ツイッターのLANケーブルには、その間をいさぎよくスパン!と切り離していた。インとアウトが直結。なんかすごく痛快だった。

誰が作ったのかなと見ると、「愛三電機」さんである。「あ!坂口電熱さんと並んでるお店だ!」と、僕もアキバ歴34年なので当然知っている。明和電機で使うテーブルタップも買ったことがある。がちのまじめなケーブル関係のお店である。いったい愛三電機さんになにが起きたのか?

明和電機も秋葉原にお店があり、「ラジオスーパー」という、ちまたの面白い電気・電子工作をしてるかたの販売ショップも併設している。ぜひこのLANケーブルキーホルダーを売って欲しい!と思い、ツイッターを通して「コラボレーションしましょう!」と、愛三電機の「中の人」に連絡をとりました。

さて。工業部品をそのまま芸術作品の素材にする歴史はながい。それまで神や王を描いていた芸術家は、近代になると人間そのものを描くようになり、20世紀になると、その人間が作ったもの、工業製品を芸術のモチーフとするようになった。

とりわけマルセル・デュシャンが、工業製品そのものを美術館において「これも、芸術じゃない?」ということをはじめてからは、大変なことになった。いわゆる「レディ・メイド」という手法である。これにより、日々世界中の工場の中で膨大な種類と量が生産されている工業製品たちが芸術になりえるとなり、ドドッとそれらが大洪水のように芸術の世界になだれこんできた。この混乱は、21世紀になった今も続いている。

 Dan Flavin : Another+

工場で作れられた電気部品そのものを「レディ・メイド」として芸術作品化するというのは、ダン・フレヴィンが蛍光灯そのものを彫刻のように使ったり、田中敦子が電球で服を作ったりと、現代美術の世界ではよく見かける。

明和電機も1994年に「コイビート」という製品を作った。これは松下電器(パナソニック)の100Vスイッチを64個ならべて鯉のぼりに見えるアナログシーケンサーを作ったものだが、ここにも「レディメイド」の手法が流れている。

明和電機 on Twitter: "ちまたのハンディファンがどれもファンシーすぎるので、明和電機仕様のごっついのを作ってみた。アルミダイキャストボディ。LED付き(電池食うけどビジュアル的に)。… "

最近、秋葉原にお店を出すようになって秋葉原に通うことが増えたので、当然、電気部品のお店を見てまわることも増え、おもしろし部品を発見することも増えた。今年の8月には、ラジオデパートの中の桜屋電機さんで、エフェクターを収めるシャーシを見て「ちまたのハンディファンはぜんぶファンシーすぎる!これでハンディファン作ったらおもしろい」と、業務用のようなごっついハンディな扇風機を作った。

明和電機 on Twitter: "おまたせしました!「つまみマグネット」、ネットで発売を開始しました。みなさんで計器回復しましょう! https://t.co/OY4WTSoRHc… "

また、同じく桜屋電機さんにあった計器のツマミを見て「かつてのメーターなどについた計器類が、どんどん世の中から消えいる。これで、ひっつけたらなんでも計器に見えるマグネットを作ったらおもしい!」とヒラメき、計器回復グッズ「つまみマグネット」を作った。(現在こちらで販売中!)

これらを作っていたおもしろかったのは、まるでお寿司屋さんのように、秋葉原という市場で魚(部品)を買って、アトリエでさばいて(量産して)、いきのいい状態で寿し屋(秋葉原のショップ)で売ったことである。これは「マスプロ(マス・プロダクション)」の一種ではあるが、オタマトーンのように何万個を中国で時間をかけて作って全世界で売るのとはちがう、「マイプロ(マイクロ・プロダクション)」だった。

こうした体験があったので、愛三電機さんの「LANケーブルキーホルダー」も、それとおなじ「マイプロ」だ!と思い、なにやら秋葉原で同志に出会ったようでうれしくなったのである。

11月24日、はじめて愛三電機のLANケーブルキーホルダーを作った「中の人」とラジオスーパーでお会いした。実物を見せてもらうと、本当によくできている。なんと「TOKYO AISAN AKIHABA」という印字を見せるために、長いケーブルの一部分しか使っていない。マグロでいえば「大トロ」である。さらにLANケーブル販売店として「短いケーブルは両端で信号の混乱がおきるので通常は使わないんですが、一応こちらは導通チェックもしています。」ということでした。

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部品に囲まれ、大はしゃぎする社長

二回目の打ち合わせは愛三電機さんの店舗で行うことになり、店内を案内してもらったのだが、これが楽しい。愛三電機さんはなんと今年で73周年。電気部品がたんまりあるのだが、地下がさらに濃厚で、明和電機がコイビートで使った100Vのスイッチはもちろん、三相の部品、海外の配線部品などもある。明和電機がお世話になった鳥居電器さんの電材もそろっていて、なにやら子供のころに通ったプラモデル屋さんを思い出してしまった。

愛三電機の「中の人」も、この電気部品に対する愛情がかなりのもので、「このスイッチたちがあまりにかわいいので、ランキングを作って発表しました」このスイッチを入れる音がサイコー」「ケーブル用のパイプで万華鏡が作りたい」など、独特の”電設の宇宙”の世界が広がっていました。

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画像店内の商品をいろいろご紹介していただいたとき、LANケーブルのカラフルな部品たちが目にとまった。ケーブル配線はもともと色で識別しやすいように、カラフルな仕様になっている。それらがまるでレゴブロックのようで、魅力的。「これで、なんか作れるかもです。持って帰ってもいいですか?」ということでサンプルをいただいた。

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アトリエに帰って、そうした部品たちを眺めました。LANのモジュラージャックは、愛三電機さんの「LANモジュラージャック」と、とうぜん合体する。その合体したアトリエで見ていたとき、「あれ?これって象じゃない」とぴきーん!。さっそくアクリル板を切って足のパーツを作って合体させ、目を描いたら・・・

なんとキュートな象ができた!僕の好きな画家のマックス・エルンストが、トウモロコシの貯蔵タンクを象に見立てた絵を描いてるが、そんな感じでモジュラージャックとLANケーブルがそのまま象になった。

 

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そしてもうひとつ。愛三電機の「中の人」が、LANケーブルカバーを指にはめて「この圧迫感がサイコーです」と”電設の宇宙”をくりひろげられているのを見たとき、「あれ、これって帽子みたいだな」と気になっていた。

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指に顔を描いてかぶせてみたら、もうこれは帽子にしか見えない。これはいける!

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さっそくアトリエで帽子をかぶるキャラクターをプラスチックをカットし、LANケーブルカバーをかぶせたら・・・・これまたキュートなキャラクターができた。名前はストレートにMr.LAN、と命名した。

まるでお寿司屋さんみたいに、愛三電機さんで仕入れた素材で、パンパンとできたので、さっそく愛三電機さんの「中の人」に写真を送ったところ、「かわいいです!これは爆誕ですね!」ということで”電設の宇宙”の仲間入りをすることができました。

「中の人」にいろいろお話を聞いていると、華道をずっとやっています、ということでした。そこで僕の中でいろいろなことが腑に落ちました。長いLANケーブルをばっさりと切ってお店に並べたあのセンスは、華道だったのかも、と。たしかにLANケーブルの屋内配線も、長いケーブルを要所のあわせて切っていき配置するので、華道にも似ているかもしれません。

ということで、このたび愛三電機さんと明和電機のコラボレーションアイテムを販売することになりました。メイドイン秋葉原のこちらの商品、どうぞよろしくお願いします!

【販売店舗】
愛三電機 秋葉原店
明和電機 秋葉原店

【ネット販売】

明和電機STORES・・・・・https://maywadenki.stores.jp/
愛三電機ネットショップ・・・・AISAN eショップ

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