〈前篇〉高橋君がみてきた驚愕の中国パクリ市場の現実。そしてそこにつながる大型小売店。そうした現実の中で、個人のクリエーターは、どうやって自分のアイデアをパクられずに作ればいいのか。今回はこのふかーい問題について、高橋君と対談しました。
驚愕!中国にパチモン市場 前篇はこちら!
■パチモン商品の分析
中国でコピーされた「パチパチクラッピー」。どんなふうにコピーされたのか、興味あるわー。細部をみていくと、まず大きくちがうのは手の素材。
高 そう!
社 ホンモノはシリコン製。しかも中味がつまってる。・・・かなり重たいですね。
高 これでパチパチっと人間の拍手とおなじ柔らかい音がなるというのがポイントです。
社 一方、パチモンは・・
高 中身がすっからかん!空洞になってる。
社 薄っぺらいプラスチックでできてる!
高 しかも、爪とシワついてる(笑)
社 パクった人のこだわりがここで出てるんだろうな。白いだけでは手に見えないと思ったんでしょうね。
高 いちおうデフォルメしたつもりなんすけどね。
社 あと、金型の割り方がちがう。ホンモノはボディが左右にわかれるけど、パチモンは前後になってる。
高 そして分解すると、中の機構もごっそりちがいますね。
社 シンプルになってる?
高 すごくシンプルになってますね。簡単なしくみで、爪がひっかかって、抜けたらパチンと音がなる。
社 なるほどね
高 あちこちシンプルになってるんですが・・使ってみると、100円パチモンのほうが、軽くて操作が気持ちいい!
社 拍手の音も、パチモンの方が良くない?
高 そうなですよー。これでいいんじゃないかと。
社 パクッた方が性能がよい!安く作るために、部品点数をへらして、組立工程も簡単にして、いろんな工夫の結果が製品の質の良さにつながった・・ゼロ戦みたいだな。
高 僕も商社がパクりと言うので、どんなものかと疑ってましたが、これを見て納得しちゃいました。なので契約を結び、「廉価版」と呼んぶことにしたんです。むしろ、ここまで進めてくれてありがとうって感じで(笑)
社 最大のポイントは手だね。中身がつまったシリコンじゃなくて、空洞のぺらっぺらになってる。この選択は、高橋くんはできなかったでしょ?
高 できませんね。
社 わかりますわかります。だってここが高橋君の一番のこだわりだもん。クラッピーの開発の原点には、大学時代からの「拍手マシーン」の歴史がありますもんね
高 はい。「音手」という拍手マシーンで、いかに人間の手の素材を再現し、機械に人間のような音の拍手をさせるか、という研究をしていました。
社 そしてたどりついたのが、シリコン製の手。だからそこを捨てるなんて発想はでてくるのはむずかしい。
高 でも、このパチモンを見たときに、あ、こういう方法もあるのか、と
社 これって、すごく重要なポイントだと思うよ。マスプロにおいて。オモチャのような大量生産品を作るとき、「何を残して、なにを捨てるか」というのが大事。中国製は、シリコンという素材を捨てることで、100円という価格になり、かつ、操作感もよくなった。
高 勉強なるなー
社 僕、このパチモンを見て思うんですけど、この設計をしたひと、相当センスがあると思うんです。もしかしたら、高橋君みたいに、若い世代かもしれない。いままでみたいにただパクるというんじゃなくて、ちゃんと今の時代のセンスを持っていて作ってる。だとしたら、てごわいです。だって、昔の日本がそれだったから。めっちゃ軽いトランジスターラジオや電卓を作ったりしてたからね。
■オモチャがコピーできる時代
社 しかし、今回、、中国のパクリ市場、想像以上にすごいことになってて、びっくりしたね。
高 規模感がすごいです。
社 ちょっと前の音楽業界みたいなことになってる
高 ん、どういうことですか?
社 レコード業界の大発明は、音楽というコンテンツをプラスチックに刻んだことだった。音楽そのものは物質ではないけれど、エジソンがそれを物質に転換した、というところが大発明。
高 エジソン、えらい。
社 レコード会社という「プラスチック販売会社」は、音楽というコンテンツをプラスチックに刻むことで、バカみたいに安いプラスチックの価値を、何百倍にもふくらまし、さらにそれを何千枚と売った。
高 あはは、プラスチック販売会社。
社 アホみたいにもうかった。バブルのときなんか、CDというプラスチックの板が100万枚売れるなんて、あたりまえだったからね。
高 一枚3000円~4000円しましたからね。
社 明和電機が1995年、ソニーミュージック時代にレコーディングしたスタジオは、某有名ミュージシャンのスタジオだったんだけど、「ここは南国のリゾート地か」っていうくらい豪華だった。東京のスタジオだけど。
高 バブルだ!
社 でもCDの時代の悲劇は、プラスチックからコンテンツをはぎとれるようになったこと。みんなパソコンという「コピー機」と「通信機」が合体した機械を持つようになったので、バンバンCDをコピーして、ネットにばらまくようになっちゃった。
高 あ、そっか。
社 明和電機も、最初のころはCDが大きな収入源だったから、それが売れなくなったから大変で・・・ソニーミュージックも明和電機のマネージメントから撤退しちゃった。でもそのあと、明和電機はオモチャを作るようになった。オモチャも、プラスチックに「あそび」というコンテンツをきざんだものなんだけど、オモチャはCDとちがって、プラスチックからコンテンツをひきはがせない。
高 あ!なるほど!たしかにCDみたいにひきはがせない。
社 だからこれはCDとちがって安心だ、パクれない!とずーっと思ってた。「物質最高!いえい!」って。ところが今回の魚コードUSBも、パチパチクラッピーも・・
高 あ!やばい!、プラスチックからコンテンツを勝手にひきはがして量産してる!
社 そうなのよ!3Dプリンターとか、3Dスキャナーとかが安価かつ高性能になってきたので、オモチャというプラスチックから形のデータを簡単に引きはがせるようになった。さらに、今回の中国のパクリ市場みたいに、その規模で、モラルなくやられると・・
高 ぎゃー、だめだー。
社 あはは!だから、やばいんですよ、この業界も。
高 好きな形をはぎとれるんだ!
社 かたちだけはなくて、しくみもはぎとれる。
高 たいへんな時代だ・・・
社 おそらく近いうちに、スマホにも3Dスキャナーがあたりまえに搭載されるし。そしてクラウドにはみんながアップした3Dデータがどんどんふえる。すると保存されるデータの精度もあがってくる。一方で3DプリンターやCAMといった製造側は安くなる。どんどんコピーがしやすくなる。
高 あー。
社 だから最近、クラウドファンディングで発売する前に中国でつくられちゃう問題があるじゃないですか。
高 あります、あります。最近でいうと、四角いキューブでできたスイッチをかちかちやるやつ。
社 なんだっけ?しかくいやつ?どれ?
高 これです。ただカチカチして 遊んで集中力高めるみたいな。キックスターターの時では7億円をあつめたんですけど。このあいだ中国行った時、まあ めちゃくちゃこれ売ってるんですよね(笑)そこらじゅうに。簡単に作れるんで。
社 ぎゃはは!パクリやすそー!
高 中国のパクリ工場としてはこれめっちゃいいネタだ。スイッチ入れてつけてプラスチックの形だけなんで。こういうの大好きなんですよ。
社 たしかに、機能が単純だからなあ。
高 もう1個、ハンドスピナーっていう。これまた集中力をたかめるアイテム。もともとアメリカで流行ったらしいんですが
社 へー。しらなかった。
高 やっぱりに中国行ったらこれが、めちゃくちゃあるんですよ。どこの売店にも。本物は139ドル以上するらしいんですよ
社 え…1万3900円??高い!
高 それが中国製だと8ドルぐらいで売ってました。
社 800円(笑)
高 もっとねぎったらもっと安く買えますよ(笑)
社 あかんあかん(笑)
高 金属の加工、プラスチックの加工、ちょっとやっただけで作れるもの。
この辺も怪しいのは、金型おこして簡単に作れるので。
社 なるほどね
■パクラレないためにはどうする?
高 こうみると、オタマトーンはすごいですね。まだパクられてない。
社 2008年に販売はじまりましたけど、まだコピー消費は出てないからね。シリーズのトータでル50万個ぐらい売れてます。オタマトーン。
高 え!すごい!中国のパクリ工場が、なんとかコピーしようとトライしたと思いますけど(笑)
社 わはは。形はコピーできるけど、しくみが難しすぎて、量産できないんだと思う。このしっぽ部分のスイッチがむずかしくて、不良品がたくさん出る。歩留まりが悪い。
高 あー、パクリ工場も、最初は「んー、どうやって作ってるのかなー?」で、「んーうまくいかないなーコストかかるー」となって、最期に「はいはい、やめた!やめた!」って
社 おこってオタマトーンを壁に投げつけたでしょうね(笑)
高 生産を行った(株)キューブさんが、中国で作るとき、最初は不良品だらけだった?
社 そう。それをキューブさんと工場ががんばって、すこしずつ不良率をさげていったから、現在はコピーされない。その工場しか作れない。
高 なるほど。そこまでいってるんですね。
社 パクられないためには、技術的にそういうものを持つかだなあ。
高 あー
社 なんか、パクりやすさを、数値であらわせないかな。単位は・・・「パクル」?
高 わはは、「ルクス」とか「モル」みたいな
社 魚コードは形だけだからパクリやすい「80パクル」。でもオタマトーンはしくみがむずかしいから「10パクル」みたいに。
高 ドラえもんとか形が丸くて単純だから、「90パクル」だ。
社 ベイマックスはもっと単純だから「99パクル」だな!
高 ぎゃはは
社 とにかく、パクルを下げないといけない。幸い音楽と違うのは、音楽はものすごい難しい曲を録音しても、簡単にコピーしてパクれるけど、オモチャは難しい作りはパクりにくくなる、ってことだね。
高 それは良い面だ
社 僕が危険だと思うのは、電子部品のユニットを組み合わせただけで出来る電子ガジェット。最近多いじゃない?あれはもう、一発でパクられる。「90パクル」。
高 パクリにくいといえば、朝日玩具さんで見たビリビリガジェット。
社 なんですか、それ?
高 ペンの形で、ノックしようとするとビリ!ビリ!ってくる。
社 簡単にパクれそうだけどね。
高 その商品の検品を人間がやってるんですが ビリビリするか肉体でチェックしないといけないので、みんなつらすぎてやめてっちゃったらしいです(笑)
社 わはは! そうかそうか。検品のつらさのハードルをあげとけばコピーされない商品もつくれる!
高 「だれも検品してくれいんだよー」って言ってました。
社 あとはオタク向け市場かなあ。中国でコピーしても、文脈がわかるところでしか売れない。その国に著作権の考えがしっかりあれば、保護できる。
高 なるほど。
高 そうでなければ、ディズニーみたいに、がちがちに権利を警備していくしかないね。でもそれは個人では無理。
高 うーん、たいへんですね・・。
<つづく>
魚コードUSBのコピー問題から高橋くんとの対談。今回は「モノを作る」という点でのパクリ問題でしたが、いよいよ<後半>は、「モノを売る」という点でのパクリ問題について、対談します。乞うご期待!
【明和電機インフォメーション】
明和電機が2003年から毎年開催している、会社の事業報告会のスタイルで行うライブ・ショー、それが「明和電機・事業報告ショー」です。日本のサラリーマンが愛するプレゼンツール「パワーポイント」を使い、一年間の活動報告と、これからの活動予定を、社長の軽快な爆笑トークを交えて紹介します。 2016年度の明和電機は、上海にて広大なスペース(3000㎡)の美術館での個展を成功させ、オダギリジョーのライバル役であった「重版出来!」のドラマ出演、新商品「オタマトーンテクノ」の発売、模型の祭典「ワンダーフェスティバル」への参加など、多岐にわたる活動を展開しました。 また毎回ユニークなゲストをお招きしてのライブやクロストークもコーナーでは、二胡奏者のKiRiKoさんをお迎えし、明和電機の電動楽器と中国の伝統楽器との合奏、また海洋堂社長の宮脇修一さんをお迎えし、「ワンフェス」初出展の裏話や新商品開発の話などをお聞きします。 また、バイバイワールド株式会社の高橋征資さんをゲストにお迎えすることが緊急決定!魚コードUSB騒動について徹底解明します。 ユニークな明和電機の活動のすべてがわかるイベント、「事業報告ショー2017」に、みなさまどうぞご来場ください。 ■日時 2017年4月14日(金) 開場 18:00 開演 19:00 ■会場 スクエア荏原 ひらつかホール(〒142-0063品川区荏原4-5-28) ■チケット 前売り 2,500円 / 当日 3,000円 一般発売・・・3月18日(土)10:00~4月13日(木)21:00まで 前売りチケットは社長のイラスト付きオリジナルチケットをお送りします!サイン入り! チケットのご購入はこちらから→ https://maywadenki.stores.jp/ ※発送の関係上4月9日以降にお買い求めの方は、当日受付にてチケットをお渡しいたします。明和電機事業報告ショー2017 一般前売チケット販売中!追加ゲスト決定!
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