前回は、「社長のトラブルがまわりに伝搬していく」ことについて書きましたが、
今回はそんな社長が上海展で犯した、致命的なミスについてご説明いたしましょう。
今回の上海展は、敷地面積が3000平米もあるため、新作を含む明和電機のすべての製品を運びました。当然、撤収作業もどえらいことになります。重たい木箱で85箱。それに3日間かけて分解した製品を、こつこつと詰めていきます。
ひとことで言うなら、「果てしない引越し」ですね。社長も工員さんも、黙々と行います。
「ああ、早くごはんの時間にならないかなあ・・」と願いながら、自分が作ったものの奴隷となって、ひたすら梱包していくわけです。
箱詰め作業が嫌いなわけではありません。むしろ大好き。コンビニでよく売ってる「100円ショップのアイテムで整理整頓」とかのムック本を見ても、「あまい!あますぎるわああ!」と床にたたきつけるぐらい、箱詰め整理が好きです。
でも、展覧会の梱包は度が過ぎてる・・・
とにかく三日間かけて、工員さんとなんとか箱詰めをし、荷物確認のチェックを終えたのが三日目の夜の九時。そこから大型コンテナのトラックとフォークリフトが到着し、中国人の屈強なアニキたちが、わらわらと降りてきました。
中国語をしゃべる、屈強な男たちの集団を見ると、なぜか「少林寺」を思い出します。その少林寺のアニキたちが
「◎×+=◎ーー!!!」
と、僕らにはまったくわからない合図の声とともに、木箱をがんがん詰め込みはじめました。
しかし、ただ詰め込めばいいというのではない。85箱を木箱を、うまく奥からつめていかないと、全部入らない。「巨大な3Dテトリス」をやってるようなものです。明和電機の工員さんも、うまく入るよう、「イーっ アールっ サンっ スー!」と、少林寺のアニキに交じって、中国語で声をかけながら、つめていきました。
そんな作業がはじまって3時間。ようやく夜中の12時を越えたあたりで、ギリギリすべての木箱がコンテナ車に詰め込まれました。少林寺のアニキたちも、工員さんも、おもわず歓声と拍手です。日中合作梱包大作の完成です。
そんな目頭が熱くなるようなフィナーレを、僕も「うんうん」とうなずきながら見てたわけです。そしたら、その少林寺のアニキの中のいかにも「塾長」みたいな魁な男が、つかつかと僕の方へよってきて、
「◎×+=◎ーー!」
とまったくわからない中国語で、僕にへんなパーツを手渡ししました。
それが、この上図にあるようなものです。
文字が書いた白いプラスチックと、金属でできた二つの円錐型のAパーツとBパーツが、細いプラスチックでつながっている。どう見ても、その細いプラスチックを切断して合体させるようにできている。
「なんすか・・・これは?」
手のひらの中の、なぞのパーツを見ながら、悩みました。少林寺からのプレゼントだろうか?いや、それにしては未来的すぎる。少林寺からだったら梵字とか書いてるだろう。でもこれは数字だ。なんだこれは・・・・・ううううん・・・・。
悩んだあげく、僕がくだした結論は、
「前の展覧会で、誰かが忘れていったもの」
でした。それを塾長が「これ、おまえのだろう?」と持ってきたにちがいないと。であるならば、僕らの展示では使ってないものなので、これは ”ゴミ” にちがいない。ゴミと決まれば、心の中に、むらむらと、このパーツを合体させてみたい!と欲望がわきました。だって、それが「合体させてみてください!」っていう形をしてるんだもの。しくみ大好きエンジニアなら、だれだってAパーツとBパーツをつなげてみたくなりますよ。
そこで、なんの迷いもなく、AパーツとBパーツをつなげている細いプラスチックをポキッと追って、カチリと二つのパーツを合体させました。みごとにぴったりはまり、快感!!!いえーい!!
ばっちり組みあうパーツだな、はめたらぜんぜん抜けないなああ・・としげしげと見てたら、ふと、周りが静かになってるのに気がつきました。えっ?と思い、まわりを見渡すと、少林寺のアニキたち全員(12名ほど)が、無言でぼくを見てる。その顔はあきらかに「おまえは・・・なんこてとを・・・してくれたんだ」という表情で、見てる。そしてしばしの沈黙のあと、
「◎×+=◎ーー!!!」
「◎×+=◎ーー!!!」
「◎×+=◎ーー!!!」
「◎×+=◎ーー!!!」
「◎×+=◎ーー!!!」
と、その場にいた少林寺のアニキたちが大声で騒ぎ始めた。どこかにいきなり電話をかけてるアニキもいる。頭をかかえて座り込んでいるアニキもいる。さっきの塾長も、誰かとケンカをはじめている。
「なんだ?なにがおこんったんだ?」とおたおたしていると、美術館のスタッフが青ざめた表情で寄ってきて、こう教えてくださいました。
「社長さん。それは、中国政府が発行した、カギです。すべての荷物をコンテナに積み込んだあと、その扉にロックをかけるための、この世に一本しかない、大切な”杭”なのです。」
まじかかああああああ!わしはその大事な”杭”を、から打ちしてしもたんかあああああ!!!
まわりの大騒ぎでの中に茫然と立ち尽くしていると、その美術館スタッフの方が、ため息をつきながら言いました。
「社長さん。ここにあなたがいても、何も前には進みません。とりあえず、今夜やホテルにおもどりください。これから、鍵の再発行ができるかどうか、政府にかけあいます。ただ、これだけは覚えておいてください。鍵が再発行できないと、明和電機の全製品は、中国から出荷できないということを・・・。」
(つづく)
「明和電機事業報告ショー 2016」
◎日時:2016年4月22日(金) 開場18:30/ 開演19:00
◎場所:スクエア荏原ひらつかホール (荏原平塚総合区民会館)
(〒142-0063品川区荏原4-5-28)
※東急目黒線 武蔵小山 徒歩10分 /東急池上線 戸越銀座 徒歩10分
◎入場料金(全席指定):前売¥2,500 / 当日¥3,000
☆チケット一般発売中☆
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■明和電機ジャーナル 11号
明和電機の上海での展覧会、「明和電機 超常識機械(ナンセンスマシーン)展を
知りたい方はこちら!展覧会のすべてを収めた「明和電機ジャーナル11号」