ジューサーミキサー

朝は野菜ジュースをミキサーで作って飲む。小松菜とリンゴとトマトが入ったジュース。

素材はそれぞれ硬さがちがう。いきなり一番かたい林檎を入れると、ミキサーの刃が食い込んで動かなくなる。だから重ねる順番は、下から、「小松菜、トマト、リンゴ」の順。

少しの水を入れてスイッチを押すと、まず小松菜が粉々に砕けて水とまざり、緑色の液体層が生まれる。しかしそこから先にすんなり進むことはない。ただただ対流が起きるばかりで、トマトとリンゴの層まで砕けない。

そんなときはいったんミキサーのスイッチを切る。そして一瞬だけ入れる。すると、モーターの起動時の振動とトルクで、ほんのすこし全体がくずれる。これを「フラッシュ」というそうだが、そのフラッシュを間をおいてぐん、ぐん、と何度か繰り返す。そして最期にスイッチを入れっぱなしにすると、やがて頑丈だったトマトとリンゴの足場は崩れ、いっきにミックスが始まる。

これを見るのが本当に好きだ。なんだか快感だ。

おそらく大きくたとえると、これは「頭の中でアイデアがひらめく瞬間」に似ているのかもしれない。経験や勉強で、あたまのなかには小松菜やトマトやリンゴが詰め込まれる。でもそのままでは新しいものは生まれない。だからそこから熟考をはじめる。ああでもないこうでもないと、ミックスのスイッチを入れる。

しかし、ひたすら考えたからといって、いいアイデアが浮かぶとはかぎらない。考え続けるとか、エネルギーを使い続けるということが、ちょうど小松菜の液体層が安定するように、逆に対流のある「定常状態」を作ってしまい、そこから前に進めなくなる。自分では一生懸命がんばってるのに。

そんなときにスイッチを切る。これは「休息」だ。休息を入れると、別な視点からアイデア作業を眺めることができる。ふたたび起動するための活力もたまる。そしてふたたびスイッチを入れると、みごとに素材がまざりはじめ、ミックスジュースができあがる。スパークの瞬間だ。

朝は時間がなくて忙しいが、その快感が見たくて、ついついジューサーミキサーにちょっかいかけながら、ぼんやり見てしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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