昔のおもちゃ箱

昔のおもちゃ箱
明和電機は現在、フランスの展覧会にむけて、むかしの製品をメンテナンス中。
むかしといっても古いものは17年前に作ったものだったりする。そこには過去の自分の記憶が触覚的に刻まれてます。
例えばみなさん、小学校の時に作った焼き物とか彫刻とか押し入れの中にありませんか?それが大掃除のときに出てきて、手に取った瞬間、当時の記憶とか匂いとかがぶわってよみがえってきませんか?
あれです。あの感覚が過去の製品をメンテナンスするときに蘇るのです。その数100点以上。もーね、ぶわぶわですわ。これはちょっとしたタイムトラベルですね。
箱を開けてもうひとつビックリするのが自分の作ったものが錆びたり色褪せたりして古くなっていること。当たり前のことなんですが、作った本人には完成したときのイメージが強烈にあって、それが変わらないと思いこんでる。ちょうど、お母さんにとって子供がどんなに大きくなろうとも赤ちゃんのときの笑顔を覚えてる感じかな?
だから錆びてたりするとせつないんですねー。芸術作品としてみたら「風格」が出ているんだろうけど、機械としてみたら実に切ない。かろうじて僕の製品はアルミと樹脂で出来ているので、軽く研磨してオイルでみがけば、当時の輝きに戻ることができます。それをするかどうかは悩みどころなんですけどね。
いつか僕がこの世界から消えたら、このたくさんの製品たちはどうなるんだろう。メンテが繊細すぎて、僕が手を入れないと動かない機械とかあるし。
自動で動く機械ほど、背後にはそれを親のように見守るエンジニアがいる。そしてエンジニアの寿命は無機物の機械よりは短い。
悲しいとか心配という気持ちはさらっさらありませんが、生命と機械がリンクしていることに不思議な気持ちになります。

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