先日、ふらりと入った飲食店が、もんのすごくマズくて、驚いた。
店内は、まるでフランチャイズ店のように、内装が作られていて、メニューも、看板も、きっちりとデザインされている。安心感ただよう見た目なのだ。しかし、料理はまったく安心できない味だった。
切ない。実に切なくなる。お店をひとつ作るのって、すごく大変なことなのに・・・・この店は・・・・確実に・・・・・つぶれる。うーん。切ない。幼少のころ、父の明和電機の倒産を経験したことがあるだけに、事業の失敗の悲壮感は、身に染みる。
なんで、こういう店になってしまったのか?自分なりに考えてみた。
まず、オーナーが、のっけから「フランチャイズ」を意識してるのが、そもそもの間違いだと思う。フランチャイズは、十分な資本を持つ企業が、マーケティングと、徹底した流通管理と、完璧なCIデザインによって、作り上げるものだ。そこにかかるコストは、他店舗展開によって、分散される。一店舗しかない店では、それができない。
しかし、そこを無理をして、内装やメニューや看板のデザインを外注のインテリア・デザイン業者に頼む。これも大間違いで、「自分に店のデザインのビジョンがないから、人に頼む」ということをやってしまってる。メニューなんて、墨と筆でヘタクソでも自分の字で書いてもらった方が、よっぽどおいしそうに見えるのに、「ふぉとしょっぷ」とか「いらすとれーたー」を使う。そういうものを見ると、
お前は、お正月にはじめてパソコンで年賀状を作ったお父さんか!
と思ってしまう。これは、僕らクリエーターもはまりがちなミスだ。既存のアプリケーションで、きれいに作ったものは安心な気がする。しかしそれはけっして人を感動させることができない。
一事が万事だ。そういう「どこかで見たことがある、安心なもの」を組み合わせて、あたかもフランチャイズ店のように見えるお店を作りあげてしまう。そういう店は、お客さんに「おいしい料理」を食べさせたいのではなく、「お店のビジョン」を食わせようとしているのだ。そこに、お客さんは、ズレを感じる。
それで料理がおいしければ問題はないのだが、フランチャイズを意識してなのか、レトルトとか冷凍とかの手抜き感がチラリと見えたりする。それが大問題なのだ。なぜなら
「同じ料理なら、既存のフランチャイズ店の方が、安くて、うまい」
からである。一店舗しかない店なら、一店舗なりの個性の出し方があるはずだ。それを最初から捨てて、いきなり過酷な団体レースに飛び込むのだから、勝てるわけがない。
店をフランチャイズのように見せたいオーナーは、どこかで、「本当の自分を隠している」と思う。それが大間違いだと思う。
料理とは、もっとも原始的な人間の欲望につながる、泥臭いものだ。そしてお母ちゃんの味ではなく、わざわざ外食でそれを食べにいく、というは、コックやオーナーの「人間性」を食いに行くということだと思う。そこで、自分を隠して飾り立てたものを出されても、ただ、ただ興ざめだ。二度とは行かない。
外食産業は、不況だといいます。でも食べにいく価値があれば、お客は絶対にいきます。重ね重ね、一店舗だからできる個性的な戦略を、たててほしいものです。