そもそもメディア芸術ってなに? 国立メディア総合センター <考察>

 

ひさしぶりに、ブログ復活!

本当はナンマシ展のみの特設ブログだったんですが・・・・

「メディア芸術総合センター」のことで議論があり、

ちょっと頭の整理に書いてみます。

とりあえず、まずは基礎ということで

「そもそも メディア芸術って何?」

ということを考えてみました。

 

Photo_2

 

一般の方が「メディア芸術」っていう言葉を目にしはじめたのは、
1997年の文化庁が「メディア芸術祭」をはじめてからです。

しかし、それ以前に

「メディアアート」

っていう言葉がありました。

「メディア芸術」と「メディアアート」はちがうのです。

ややこしいですね。

それについて、僕の見解ですが、ご説明します。

 すべての芸術作品は、「イメージ+メディア」でできている

Photo_3

 

芸術家が作品を作るとき、自分の頭の中にある「イメージ」を、

なんらかの物質に収めて作品を作ります。

画家であれば、イメージをキャンバスに。

彫刻家であれば、石や木に。

ざっくり言えば、こうしたキャンバスや石は「メディア」です。

芸術家のイメージを記録し、他のだれかに伝えるので。

だから「メディアアート」という言葉は、厳密に言えば、絵画も彫刻も入ります。
しかし現在は、そうした古来からある芸術を「メディアアート」とは呼びません。

なぜなら、現在のメディアアートは、20世紀以降の新しい機械技術によって生まれた


「ニューメディア」

を使ったアートのことを言うからです。

「メディアアート」は、だから本当は「ニューメディアアート」のことなんです。

「デジタルアート」「マシンアート」「ビデオアート」「コンピューターアート」「キネティックアート」
・・・呼び名は違いますが、これはすべて、20世紀以降に登場した写真や、
映画、テレビ、機械技術、コンピューターなどを、
かつてのキャンバスのように使って作った芸術。

だから、すべて「メディアアート」なんです。

Photo

 マンガはメディアアート?

それでは、印刷技術を使ったマンガは、「メディアアート」でしょうか?

それはちょっと違うのです。

芸術家は、キャンバスに絵を描きますが、一方で、「キャンバスに絵を描くとは何か?」も考えます。

「ほんとうにキャンバスでいいのだろうか・・・・いけないんじゃないか・・・・
うーん、いけない気がしてきた・・・・・・絶対いけない・・・・・いけないにきまってる!!」

Photo_4

とそこまで考えつめ、いきなりキャンバスに頭をつっこんだりします。

なぜそんなアホなことができるかというと、
芸術家にとっては、「メディア」そのものも

モチーフ

だからです。

そして穴の開いたキャンバスを「おもしろい!」と買う、

おかしな人々もいるのです。

だから食っていけます。

Photo_5

ところがマンガ家は原稿用紙に頭を突っ込んで破ったりしません。
どんなに赤塚不二夫氏が、実験的であったとしても、原稿用紙は破りませんでした。
なぜなら穴の開いた原稿は、出版社は買ってくれないからです。

そしてもうひとつ大事なことは、
芸術家は一人のマニアックなコレクターが買ってくれれば生きていけますが、
マンガ家は、大衆が買ってくれないと生きていけません。

大衆に買ってもらうために、「コピー(複製)」をします。
それをたくさんの人に買ってもらうために「エンターテインメント」にします。

つまりマンガ家は、「アート」ではなく、

「メディア・エンターテインメント」を作っているのです。

このことは、映画やアニメやゲームにも共通することです。

Photo_6
Photo_7

 「メディア・アート」と「メディア・エンターテインメント」の違い

Photo_8

さて、ここまでの話をふまえて「メディア芸術」をもう一度みるとそこには

「メディア・アート」と「メディア・エンターテインメント」が二つの意味が

まざっていることがわかります。

このことが「メディア芸術」についての議論をややこしくしています。

西洋では、この二つの領域をきっぱり分けるようです。

余談ですが、明和電機が海外で公演をすると、ときどき

「お前がやりたいのは、アートなのか?それともエンターテインメントなのか?」

と言われるのです。
それには

「うーん、実は日本には、どっちつかずの“芸能”というジャンルがありまして・・・・
あなた方がアートだと思ってる歌舞伎も、本来はその“芸能”でして・・・・
実は僕、コメディアンの事務所、吉本興業に所属してるんです!!」

という流れになって、いつも相手をさらに混乱させてしまいます。

しかし、この「アート」と「エンターテインメント」が混在してしまっていることが、
実は、日本の特長だと思うのです。
というか、その区別すらないのです。

だから茶道や書道のように、日常生活がそのまま芸術に昇華できたり、
マンガやアニメが、単なる童話ではなく、崇高な思想を込めたものになるのです。

そして海外の人たちがそれを発見して驚くのです。

 メディア芸術という名前は・・・

さて、「メディア芸術」というあいまいな言葉は、そのなんともいえない日本人の特徴を
実によくあらわしていると思います。
カタカナと漢字。

英語に訳すと「 Media Arts 」と複数形にします。
ここから「アート」と「エンターテーメント」の混在というニュアンスをつかむのは、無理でしょう。

Brt

だからといって、英語でぴったりくることばあるわけではない。
その辺、僕も悩んで、

「日本にはA級のアートはなくて、みんなB級だから、ArtではなくてBrtでいいんじゃない?」

とも考えたことがありました。

とはいえ今回の「メディア芸術総合センター」の騒ぎのおかげで、
広く大衆が

「メディア芸術」

という言葉を見るようになりました。
いまさら変更しても、もったいないし、
このまま「メディア芸術」で言い切るのがいいんじゃないかな?
と僕は思います。

コメントは受け付けていません。